名作ドラマ、華麗なる一族からビジネスと人生を考えていきます。こんにちは、億人です。
ある関西の銀行の頭取とその家族をテーマにしたこの作品、
人生やビジネス、家族についてなど、いろいろ考えさせられる名作でした。深すぎる。
まだ見てない人は絶対に見た方がいいですし、ネトフリとかアマプラとかで見れるはずなので、探してみてみてください。僕はネトフリでみました。
ここからはガンガンネタバレします(ご注意を!)が、学びになる部分も解説していきます。
華麗なる一族とは?
ちなみに、こちらの作品ご存知ですか?
知らない方のために説明すると
白い巨塔(こちらも名作)の作者でもある山崎 豊子さんの小説を元にしたドラマ。
白い巨塔も、力と名声を求める財前五郎と、同期の医師であり理想主義者である里見、そして財前の所属する外科の東教授との生き様のバトルがすごかった。最終話の財前の手紙にいたるまで、まったく息がつけない名作です。
白い巨塔でも華麗なる一族でも、山崎さんの作品は、共通して、ただの勧善懲悪ではなく、登場人物それぞれに正義があって哲学があり、それらがぶつかる物語が非常に奥深いので、人生について考えさせられます。他のドラマにない深みがある。おすすめです。
登場するどの人物の、どの生き方も正解である。だからこそ、単純に誰が悪なのか?を決めつけることはできないですが、だからこそ人生について考えさせられる。華麗なる一族も、そんな作品になっています。
今回紹介する華麗なる一族は、何度もドラマ化されリメイクされていますが、僕はWOWOWで作られた中井貴一さんが主演の作品をみました。
舞台は1960年代。神戸銀行を舞台にして、その一族の繁栄と衰退をテーマにしています。
シンプルにただの地方銀行であった阪神銀行を舞台に、その小さな銀行が大きな銀行を食っていく姿を、ことこまかに鮮明に描かれていて、ビジネス的にも非常に勉強になります。
主演の中井貴一さんがいい味出していて、インテリ頭取でもあり、歴戦をくぐり抜けてきた敏腕経営者としての腕をふるって、着々と小が大を喰らう合併を推し進めていきゾクゾクします。
華麗なる一族2つのテーマ
スターウォーズも表向きはジェダイと悪の帝国の戦いがテーマですが、裏テーマは家族愛みたいな感じ。ダースベイダーがルークによって人間の心を取り戻すのが、1大テーマなわけでして。
同じく、華麗な一族にも、表テーマと裏テーマが存在するので、それぞれ解説します。
華麗なる一族、表のテーマ
表のテーマは、主人公である万俵(まんぴょう)一家が同族経営をしている
会社や銀行がどうやって大きくなっていくか?という話。
銀行再編の動きのなかで、万俵グループの中核をなしている阪神銀行は全体で10位の預金額。
いうなれば、中堅どころの銀行です。大きな銀行からすると、すぐにでも合併できてしまう程度の規模。ほっておいたら、大きな銀行に吸収されてしまうのは火を見るよりも明らか。
それを、当主である万俵大介(中井貴一)がその経営手腕をふるいながら、攻めの姿勢で小さな銀行である阪神銀行が、より大きな銀行を合併していくなかで
他の銀行員や省庁への根回しなど、阪神銀行の成長におけるさまざまな政治的なバトルを楽しめる作品になっています。
シンプルに大介の経営力がすさまじいし、企業政治に抜かりがない部分で、大変学びがあるかと。こうやって大企業のトップは手腕をふるっているんだなと感じられます。
華麗なる一族、裏のテーマ
一方で裏のテーマとしてはそれぞれの人間ストーリーがあります。こちらのサブテーマも非常に深い。
父である万俵大介と、今は鉄平(亡き祖父・敬介に似ているため、大介に嫌われている)との間でのバトル。
万俵大介と、その父である敬介が築き上げてきたものや、その父を超えるという野心を持った大介の、内面での静かなバトル。
鉄平が父に対して信じ続けた思いと、愛情と、物語の最後にとる選択とは?
政略結婚ばかりさせられる万俵一族の掟を破ろうとする二子の恋の行方は?
などなど。マジで面白かったです。
こうしたキャラクターそれぞれに精神的な葛藤や成長があり、
こちらがむしろメインストーリーではないか?というほど
主人公たちに感情移入してしまう話になっています。
最終的に、鉄平は自○という選択をとります。
万策尽きて、これ以上父と歩み寄ることはできないと悟り、この世に残る家族や兄弟たちを考えた時に、自分に取れる最善策はこれだ。と決めた時の鉄平の無念たるや計り知れません。
シンプルに鉄平かわいそうだし、だからと言って、頭取であり父である大介の気持ちも、分からんでもない。
ああ、どうなっていくねん。とどんどん沼っていきます。
しかも最終話で、、、、ここは、あえて語りません。ぜひ作品を見て、感じて欲しいところがあります。
華麗なる一族の見どころ
万俵大介は当主であり、万俵一家の繁栄のためには肉親ですら利用するような人物。
妻の寧子は、もともと華族であって、万俵家と結婚することで一族に華族の血を入れるためのものだった。
しかも、愛人である相子も同居して暮らすというイカれっぷり。(それどころか妻も含めて3人で寝たりしてる)
家族はそれを偉大な権力を持つ父がやることなので、黙認しながら生きていますが、父である大介以外は、当然、誰も快くは思っていません。
圧倒的な力を持つ大介が右と言ったら右になるし、左と言えば左になる。
それくらいの百戦錬磨のカリスマ性を大介は持ち合わせています。
いわば家庭においても、銀行での政治と同じように、力でねじ伏せるがごとく、生活をしています。
表向きには誠実な銀行の頭取、一方でプライベートでは母と子供たちに愛人との生活を強要するという裏の顔を持っている。この二面性が、いかにも昭和感があるというか、何かを犠牲にした上でしか成功ができない。という価値観を象徴していました。
若いうちはそれでもいいかもしれません。いや、むしろ必要。若い時はトガってなんぼです。でも、本当は人生のどこかで気づくべきで、周りとの調和が必要になってきます。
また、一方でグループ会社の専務をさせている長男・鉄平の顔や動きが、
何かにつけて敬介に似ているので、毎回、鉄平をみるたびに、大介は嫌悪します。
例えば敬介と鉄平が、庭の池のコイを呼ぶときの拍手のしかたが似ている。などで大介はイラつきます。
まあ、完全に言いがかりなんですけど。
おいおい、いくらなんでもそんなの実の息子に対して厳しすぎるだろ。って話ですが、
それにも理由があって、自分の妻、寧子が家にいたある日、敬介によって汚されたのではないか。という疑念を持っていたからで。
このあたりの妻と父との関係性は、こうした昔ながらの金持ちであれば、ワンチャンあるやろうなー。って感じる部分です。
寧子や鉄平たちにしている理不尽を、大介も自分の父である敬介にされてきたのでしょう。じつにリアルです。
最終回でこの辺の真相が明らかになるのですが、なんだかなあ。とすごく悲しい気持ちになってしまう結末でした。これはネタバレではなく、実際にドラマを見て、感じて欲しいところです。
あと、鉄平はいいやつですが、最後の結末は考えられる中で、もっとも悲しいものです。性格もやさしくていい男ですが、自分の志を追いかけていきますが、経営手腕があるかと言えば、そうではなく、経営者としても没落していきます。
そして鉄平や銀平(弟)は閨閥結婚(結婚することで一族同士のつながりを太くする政略結婚)をさせられ、自分の気持ちとは裏腹な結婚を強いられるなか、
次女である二子(つぎこ)は、総理大臣の甥っ子と結婚するように命じられます。総理大臣とのパイプが結婚によってできるなら、万俵家はさらにチートをかますことができるようになります。強すぎです。一族の長である大介や、世話役の相子は必死にくっつけようとします。
しかし、二子自身は一族の娘であるという鎖と、自分の好きな人への気持ちに嘘をつきたくない。という思いで、葛藤をしながらも、成長していったり。
相手の男は、いいやつですが、身分は高くなく、自分の仕事での夢に打ち込んでいる一直線な男。
この2人がどういう結末を迎えるか?このへんも見どころです。
僕が華麗なる一族を見て感じたこと
僕が感じたことを少しネタバレもあるかもしれませんが、話していきます。
・結局いずれ全部、自分に返ってくる
→大介がやった鉄平への酷い仕打ちは、最終回で壮大に自分自身に返ってきたし、最後の晩餐はだいすけと妻と愛人のたった3人でした。一族を重視しすぎたあまり、家族がどんどん離散していき、大介はとても孤独な人生になった。
一族という概念を押し付けるのは、1960年代からすでに古い価値観になりつつありましたが、今はさらに加速していて、家柄が〜とか実家を大事にしろ。みたいなのも古くなってますね。こういうのを押し付けるのは、過干渉になりますし、今の時代には合わないかもしれません。
・たとえ家族であっても、冷徹な行動をする男はいる。僕はそれはしたくないし、しない。鉄平の生き方のほうがいい。
→僕個人としては、自分の社会的な名声のために、それ以外の全てを犠牲にする人生は嫌だなーと感じます。もちろん大介の生き方には凄みがあるし、魅力もたくさんある。しかし、大介の生き方より鉄平の方がいい。しかし、鉄平のような悲劇にならぬよう、したたかに生きるための強さも必要。つまり経営についての知力は必要ということ。
まあ、最後の鉄平がとった選択は能力がないから、というわけではなく、父への復讐という意味が大きい。なので、完全に鉄平の能力不足というわけでもないです。ビジネスのタイミングと判断を間違った、というのもあります。ですが、もう少し経営者としては悲観的に考える能力も必要でした。ようはバランスです。
ちなみに僕個人としても、父からずっと否定され続けてきた人生であり、弟ばかり肯定される謎の人生だったので、鉄平の気持ちが痛いほどにわかる。というのはあります。めちゃくちゃ重なるんですよね。
あれって、なんでしょうかね?僕も父の子じゃないのか?とか真剣に考えたこともあるんですが、いまだによくわかりません。長男は厳しくして当然、みたいな謎の風潮マジで消え去れって思ってますw
まあ過去をどうこう言っても意味ないですし、そういう人とは一定の距離を取るのが1番の正解なので、成人してからはなるべく関わらないようにしています。笑
・自分の血だけを守ろうとするのは危ない
進化生物学的にいうと、自分の遺伝子を残すことだけに執着したくなるが、それだけだと人間社会では関係性が崩壊する。大介の例がまさにそうで、自分の名を上げて残すことや、自分の父の血が入っていると思っていた鉄平に冷たくしたことで最終的に名声以外すべてを失った。
そうではなく、自分の思想や会社、作り上げた文化を残す、つまりミームの伝達をした方がいい。良い会社を残したり、自分のイズムを継承させたり。僕が情報発信しているのもそういった理由です。自分と価値観の近い仲間が増えたり、議論をできる関係を増やしたいと思っている。
・死んだ亡霊、影と戦うのは馬鹿馬鹿しいし、良い結果にはならない。
→大介はずっと死んだ父、敬介の背中を越えようと必死にがんばります。それは自分の妻が寝取られたのではないか?という恨みに対するものだったけど、最終回で衝撃の事実が分かります
大介はそれまでに敬介に似た鉄平にしてきた仕打ちに対して、心からの反省をします。
しかし、時すでに遅し。なくしたものは、2度と返ってきません。このシーンの中井貴一さんの悲しみの演技は素晴らしかった。
たとえ親子であれ、敬意や愛情は絶対に必要だと感じます。それも分かりやすく表現する必要がある。ストレートに愛情を伝えるだけでいい。
厳しくするだけが愛情ではないし、締め付けるだけが躾ではない。甘やかすのも違うし、厳しすぎるのも違う。ようはバランス。
結局、大介は敬介の亡霊を追いかけていました。ですが過去の亡霊を追いかけても意味がないし、死んだ人への恨みとか持っていても仕方がない。無益である。と感じました。
このへんでしょうか。他にもいろいろあるんですが、ゴチャってくるので、このへんで。あとは実際にドラマを見て、感じて欲しい。さまざまな登場人物がいるため、感情移入できたり、できない人物がいて、そこでまた人生観が深まるかと。
経営力ある鉄平のような男になりたいですね。頭取として名声をほしいままにする大介の人生は楽しいでしょうが、最後の最後はちょっと寂しいかな。
自分にとって人生は何が重要なのか?を十分すぎるくらい考えられる作品です。
人生に対しての学びが多すぎるドラマでした。全12話ですが一瞬で見終わってしまいました。余韻がすごいです。ひたっています。
その後、むさぼるように、山崎豊子作品のドラマ、映画をあさっています。笑
何度も見返したい作品です。非常におすすめです。